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最高裁判所第一小法廷 昭和28年(あ)4583号 決定 1954年11月11日

主文

本件上告を棄却する。

理由

被告人松田賢市の弁護人豊川忠進、同広重慶三郎の上告趣意第一点は、原判決の維持した第一審判決の事実認定を非難するに過ぎないものであり、同第二点は、違憲をいうも、その第一は、単なる法令違反の主張であり(そして、本件のような米弗表示軍票は、本件当時占領軍の軍人、軍属及びその家族が、占領軍施設内においてこれを使用することができるほか、わが国の通信官署の職員が、電信電話の料金として受領することができる等制限的ではあるが日本国内に流通するものであるから、刑法一四九条一項の「内国ニ流通スル外国ノ紙幣」に当るものと解するを相当とする。されば、所論引用の当裁判所第二小法廷の決定(判例集七巻五号一一二八頁以下)を変更すべきものとは認められない。)、同第二は、原判決の認定に副わない事実関係(原判決は、被告人の所為を共謀して偽造したものと認定し、所論のごとく偽造の紙幣を収得したものと認定していない。)を前提とする法令違反の主張に帰し、同第三点は、量刑の非難で、いずれも、刑訴四〇五条の上告理由に当らないし、また同四一一条を適用すべきものとも認められない。

被告人朴在敦の上告趣意は、事実誤認の主張であって、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。尤も、職権を以て調査すると、原判決の是認した第一審判決は、その認定した日本政府物品税証紙偽造の事実に対し、刑法一六六条一項を適用しているが、同証紙は、物品税法の規定するところに従い物品税納付の事実を証明する内容を有する政府発行の文書と解するを相当とするから、刑法一五五条三項の文書と解すべきことは当裁判所の判例とするところであるから(昭和二八年(あ)一六七〇号同二九年八月二〇日第二小法廷決定)、同判決には、法令の違反があるものといわなければならない。しかし刑法一六六条一項の法定刑と同一五五条三項の法定刑とは、刑法一〇条により軽重なく、また、本件の犯情においては、もとより差異はないのであるから、右両規定のいずれを適用しても量刑に影響を及ぼすものとは認められないので、右の違法は、原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものとは認め難い。

よって刑訴四一四条、三八六条一項三号に従い、裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 斎藤悠輔 裁判官 岩松三郎 裁判官 入江俊郎)

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